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すげェウンチ

@sugoi_unchi

霊獣フォルム

「もう夏も終わりかあ。」


奴隷のような工場アルバイトを終え、帰路に就く私とトルネロス

青過ぎる空と万緑の山々が未だ夏の隆盛を匂わせるが、吹き抜ける風の冷たさと斑らに浮かぶ鰯雲が季節の巡りを静かに知らせている。

死に際の蝉が最後に雄叫びを上げ、辺りは再び静寂に包まれた。

満を持して彼は口を開く。


「すっかり涼しくなっちまった。どうだい、今度、旅行にでもいかねえか。」

「旅行?また、どうして急に。」

「最近、ずっと働き詰めでろくな事がない。たまには息抜きもいいんじゃないか。」


此方には一瞥もくれず、事切れた蝉を木の枝で突っついていた。

私は、そのどこか胡散臭い台詞と態度の真意をなんとなく感じ取り、一呼吸置いて承諾する。

全てを照らすように白く輝く太陽の下で、イチョウ並木の作る黒い影が私達を飲み込んでいた。




「俺は目覚めるパワー氷をお前にぶつける。お前は十万ボルトで思いきり俺をぶち抜いてくれ。」


唐突に歩みを止めて彼は言う。そこは数多の木々がまるで壁のように生い茂り、光すら容易に侵入できない、樹海の奥深くだった。


「君の言う旅行って、そういう事だったのかい。」

「ああ、もう限界だ。お前もそうだろう。」

「お見通しか。悪戯心じゃなかったのかい。」


軽い冗談を交えた後、私達は技の準備に入る。

苔生した木の根やその周辺に生え揃うキノコの類いも、この仄暗く陰惨とした空間の中では、全てが色を失っていた。

空気が重く冷たい。青木ヶ原樹海は今日も生物の終わりを見届ける。


ジュワァァア…デュクシデュクシデュクシ…!

キィィィイン…ブワァァア…デュクシデュクシデュクシ…!


けたたましい轟音と共に木々が揺らぎ騒めき、やがて何事もなかったかのように元の静けさを取り戻す。

全てが終わったかに見えた。


しかし、黒焦げになってこの世を去った彼とは裏腹に、C125のクソザコ不一致抜群めざめるパワー氷では死ねる筈もなく、私は生き残ってしまった。

それは工場アルバイトからは絶対に逃れられないという絶望の宣告に他ならない。

なんという事だ!!とうとう気が狂った私は、深い木々の闇の中を駆け回り、獣のようにただひたすら叫ぶしかなかった。

獣と化した私はやがて霊獣フォルムと呼ばれる姿へと変貌を遂げ、気が狂っているので工場アルバイトはクビになりHAPPY ENDを迎えた。


もうすぐ秋が来る。